- 壁の向こう側の話
-
- 壁やドアの向こう側に何かの気配を
- 感じた事はありませんか?
- 壁やドアは自分の居る世界と
- その他の世界を仕切る物です。
- 向こう側を見ることは出来ません。
- しかし側に立つと向こう側の気配を
- 感じる事が出来ます。
- それは体温だったり、音だったり、
- 誰かの視線だったり、息遣いだったり
- 或いはもっと特別な感覚だったりします。
- それがある時、冷たい氷の様に
- 感じた事がありました。
-
- "ああ誰か居るな~"
-
- と感じる気配とは全く違う感覚がします。
- 息を潜めて危険な何かが居る!
- 悪意と殺気を強烈に放って居る!
- 本能がそう感じています。
- 呼吸を乱さずゆっくり静かに離れます。
-
- 何が居たのでしょうか?
- あの感覚は初めてです。
- 背中を冷たい汗が流れ、
- 全身が今までに経験したことが無いほど
- ピリピリと緊張しています。
-
- 壁の向こう側も此方の気配に
- 気付いているようです。
- 背中を向けて逃げ出す事は非常に危険と
- 生命の本能が知らせています。
- 頭の中で赤色灯が回転して緊急事態を知らせる
- ブザーがうるさく鳴っている様です。
-
- 勇気を出して少しずつ離れていきます。
- 立ち止まる事はとても嫌な結末を
- 予感させます。
- 壁を視たままゆっくり静かに離れます。
- 身構えたまま襲撃に備え呼吸を整えます。
- 強い恐怖の気配はまだ消えません。
- 壁を通して視線が合って居るのが
- 実感出来ます。心臓を冷たい手が
- 握りしめ今にも止まりそうです。
- そして緊張が最高潮に達して耳に聴こえる
- 全ての音が心臓の鼓動と呼吸の音だけに
- なった時に急にフッ!と気配が消えました。
- とても静で落ち着いた感じです。
- 空気は澄み、爽やかです。辺りの緊張が
- 解かれ安全な気配が漂っています。
-
- 遠くから人の声が聞こえ、
- 足音が近づいてきました。
- 限界寸前まで張りつめた精神が
- 溜め息と共に弛んで軽い目眩を感じます。
- 暫くしてやっと
-
- ”あぁ、自分は生きている、助かった”
-
- と感じました。
- 窒息寸前の緊張と恐怖を感じたのは
- 今回が初めてです。
- 確かに壁の向こうに正体不明の
- 邪悪な気配を感じました。
- 今でも生命の本能と感覚が怯えています。
-
- その後、あの壁の側を幾度か通りました。
- 何も感じません。
- ただ、最近気付いた事があります。
- それは壁の染みです。人の横顔や手の様な
- 染みが沢山付いています。
- 近づいて観察するとその染みは
- 中から浮き上がって来たようでした。
- 壁の向こうに取り込まれた人達の
- 怨念なのでしょうか?
-
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