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中江田電子

気まぐれ日記 つぶやき

壁の向こう側の話

 
 
壁の向こう側の話

壁やドアの向こう側に何かの気配を
感じた事はありませんか?
壁やドアは自分の居る世界と
その他の世界を仕切る物です。
向こう側を見ることは出来ません。
しかし側に立つと向こう側の気配を
感じる事が出来ます。
それは体温だったり、音だったり、
誰かの視線だったり、息遣いだったり
或いはもっと特別な感覚だったりします。
それがある時、冷たい氷の様に
感じた事がありました。

"ああ誰か居るな~"

と感じる気配とは全く違う感覚がします。
息を潜めて危険な何かが居る!
悪意と殺気を強烈に放って居る!
本能がそう感じています。
呼吸を乱さずゆっくり静かに離れます。

何が居たのでしょうか?
あの感覚は初めてです。
背中を冷たい汗が流れ、
全身が今までに経験したことが無いほど
ピリピリと緊張しています。

壁の向こう側も此方の気配に
気付いているようです。
背中を向けて逃げ出す事は非常に危険と
生命の本能が知らせています。
頭の中で赤色灯が回転して緊急事態を知らせる
ブザーがうるさく鳴っている様です。

勇気を出して少しずつ離れていきます。
立ち止まる事はとても嫌な結末を
予感させます。
壁を視たままゆっくり静かに離れます。
身構えたまま襲撃に備え呼吸を整えます。
強い恐怖の気配はまだ消えません。
壁を通して視線が合って居るのが
実感出来ます。心臓を冷たい手が
握りしめ今にも止まりそうです。
そして緊張が最高潮に達して耳に聴こえる
全ての音が心臓の鼓動と呼吸の音だけに
なった時に急にフッ!と気配が消えました。
とても静で落ち着いた感じです。
空気は澄み、爽やかです。辺りの緊張が
解かれ安全な気配が漂っています。

遠くから人の声が聞こえ、
足音が近づいてきました。
限界寸前まで張りつめた精神が
溜め息と共に弛んで軽い目眩を感じます。
暫くしてやっと

”あぁ、自分は生きている、助かった”

と感じました。
窒息寸前の緊張と恐怖を感じたのは
今回が初めてです。
確かに壁の向こうに正体不明の
邪悪な気配を感じました。
今でも生命の本能と感覚が怯えています。

その後、あの壁の側を幾度か通りました。
何も感じません。
ただ、最近気付いた事があります。
それは壁の染みです。人の横顔や手の様な
染みが沢山付いています。
近づいて観察するとその染みは
中から浮き上がって来たようでした。
壁の向こうに取り込まれた人達の
怨念なのでしょうか?


 

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