[ # 5 91/05/04 22:12:26 ID: 0 (MIYABEE ) ]
[ Title: チカゴロノ ハイシャ5 ]
近頃の歯医者5
”口を開いてー、力を抜いてー、緊張しなくてもいいですからねー”
口の中へ何だか変な管を2本入れられた。
不快と恐怖を象徴する器具を持って大きな手が私の口の方へ迫ってきた。
マスクをした顔が近づいてきた。
睨み返す勇気が無かったので私は目を閉じた。
不快な音と振動が私の顎に頭に首に響いてきた。
いや首から上、全部に響いてきた。
神経を逆なでする様な感覚に私は必死で耐えた。
精神的な苦痛の通り過ぎるのをただじっと待った。
肉体的な苦痛が感じられないのが、ただ一つの安心だった。
私は突然、声にならない声を上げた。
(大口を開けて恐怖の器具が中にあるのでまともな声が出るはずがない。)
顎の辺りから頭にかけて激痛が走ったのだ。
私の頭の中は、パニック状態になった。ようやく、緊張がとけて体の力が弛んだ時
だった、だけに・・・。
じわーと目が濡れる感じがした。
医者は再、私に麻酔を射った。虫歯の穴の中に直接針をいれて・・・。
私の精神力は、もう限界だった。
虫歯が痛くて眠れない夜が何日か続いたが、これ程の苦痛は無かった。
不安な目で医者や看護婦を見るのだが、その目は、
”貴方自身が悪いのよ、私たちの麻酔技術や治療技術か悪いわけじゃないの”
”これ以上、手間をとらせるんじゃーねーよ、少しは我慢をしろ”
と云っているようで、とても怖かった。
私は持てる演技力を精一杯使って恐怖と哀しみの目を女の子に向けた。
しかし、女の子は無情にも
”痛みは無いですね”
といって管を私の口の中へ突っ込んだのだった。
次回、次の治療までの1週間いったいどんな日々を過したか好御期待ください。
みやび
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