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中江田電子

気まぐれ日記 つぶやき

階段

2012年03月30日

階段

きょうは、旧家の階段のお話です。
僕が泊まったのは古い宿屋でした。
二階の部屋を寝室に宛がわれました。
街から離れ、夜はとても静かです。
季節は3月の末で夜は寒く、
素足でいると足首から先が
冷たく暖房器具が必須の場所です。
ここでは、まだ桜が咲きません。

食事や散歩その他の用事で階段を
幾度も往復しました。
段差や踏みしろも感覚は身に付いたと
思っていました。

一日目の深夜、トイレに行こうと起きました。
階段の上に灯りが点きますが、
オレンジ色の光でとても暗く
壁や足元が全く見えません。
用心深く踏み出し感覚で
降りて行きました。
思い返すと壁は木目調のベニヤ板、
階段の踏み板は焦げ茶色の塗装がして
あったと思います。

二日目の夜。
階下の物音で目が覚めました。
低い重たい音で振動の様に感じます。
暫くしても音は止まず、眠気が
失せてしまいました。
苛つきながら音源を確かめようと
起きました。

階段は真っ暗で地底に向かう洞窟の様です。
頭の上にはオレンジ色の小さな灯りが
点いています。一段降りました。

”ギイ~”
階段が軋みます。身体が緊張し
背中を冷たい汗が流れます。
ゆっくり静かに呼吸し二段目を
降りました。

”ギュ~”
また、階段が軋みます。
微かな音なのにとても大きく
聴こえます。
心臓の動悸が狂い不整脈の様です。
足下も壁も全く見えません。
勇気を出して三段目を降りました。

” ! ! ! ”
ある筈の三段目が在りません。
体重は踏み出した足に有り、
身体は前に傾き体勢を戻すのは
不可能です。両手を広げ壁を
探りましたが何も無い空間です。
鳩尾を突かれたような不快感と
息苦しさ、強烈な吐き気を感じ
そのまま真っ暗な闇の中へ墜ちて
しまいました。

目が覚めるとあの寝室にいました。
こんな恐怖を経験したのは初めてでした。
不整脈の様に動悸が乱れています。
怪我は無く何処も痛みません。
何処も汚れていませんでした。

朝食を済まして宿を出ました。
ふと、あの物音は何だったのか。
何処かに墜ちた感じがしたが、
夢だったのか思い返しました。
そして、両手の爪を視ました。

” !????? ”
”あ~~~~~~~~~~”

あの夜、間違いなく何処かに墜ちたのです。

暗い夜道、地面が在ると思っていませんか。
足元が見えない階段、次の段が
必ず在ると思っていませんか。
そこには何も無いことも在るのです。


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