2011年08月23日
怪奇な小説 鏡
廊下の突き当たりに鏡が架けてあります。
学校や病院にある物より少し小さいものです。
廊下の全てと外に面した窓が映ります。
鏡に映る廊下の奥は光が入らず
暗い闇が映るだけです。
何時もその鏡を避けていました。
何故かその鏡に映る廊下の奥が
薄気味悪く感じられ
鏡の前に立つ事もしませんでした。
また、鏡を通して視る後ろの景色にも
強い違和感があり
家族の全員が避けている様でした。
ある日、友達が遊びに来ました。
お茶を飲み談笑し歓談しました。
楽しい一時です。
話が途切れたのでちょっと腰を
伸ばしおやつを取りに席を立ちました。
戻って来ると彼が居ません。
嫌な予感がします。
気配を頼りに廊下を見ました。
彼はあの鏡の前に居ました。
何故か声を掛けるのが躊躇われ
彼の死角からそっと観ていました。
彼の視線は鏡に映る自分を視ているのか
その奥の廊下の闇を視ているのか
判断出来ません。
そのうち彼が苦しそうに呻きだし
微かに震え出しました。
ちょっと違和感があり何だか変です。
とても怖かったのですが
必死で彼を鏡の死角に引き倒しました。
大量の汗をかき、顔は土気色です。
明らかに酸欠に依る失神状態で
目は焦点が合いません。
大声で彼の名を呼び頬を叩き
肩を揺すり続けました。
暫くして呼吸を回復し徐々に
顔色も良くなって来ました。
楽しい一時が一転して緊急事態に
なってしまいました。
その後、心肺機能も安定を取り戻し
落ち着いてきたので帰って行きました。
その後、彼とは疎遠になりました。
私は今もこの家に居ます。
彼は鏡の中に何を視たのでしょうか?
何も話してくれませんでした。
ただ、あの瞬間何かを視た覚えがあります。
鏡の中の世界はこの世とは全く違う
異次元の別世界でした。
そして、その中の何かと目が合い、
そいつが枯れ木の様な細くがさがさの手を
伸ばして掴み掛かって・・・。
私はその手を必死で払い退けた
記憶が有ります。
その鏡は何時、誰が架けたか家族の者は
知りません。
気付いた時には、そこに在りました。
そして誰も取り外そうと言いません。
それほど勇気が必要では無いはずです。
また、過去に鏡が話題になった事も有りません。
しかし、全員判っています。
何故なら家族の全員が同じ恐怖体験を
しているから・・・。
※鏡に映る景色は視点により大きく変わり
現実には裏へ回る以外死角は有りません。
この場合、鏡の死角は廊下の部屋側の
壁や障子の内側をいいます。
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